Beginner#7 「意志も責任も消えた」ある長男の話
更新日:2022年10月7日
前回の記事では、パルクールの考え方と可能性までご紹介しました。トレーサー(パルクールをする人)でなくても、パルクールのメンタリティはどんな場面でも通用します。
今回からは具体的な事例も含めて、子育てや人生に役立つ考え方をパルクール目線でご提案していきます。
うちにはうちの教育方針がある
評判で習い事を決めるけど、どれもはまらない。
子どもの「好き」がイマイチわからない
そんな方々に読んでいただきたい記事になります。
それぞれのご家庭に事情や考えをお持ちかと思いますが、一度ふりかえることができる記事になりますので、ご参考ください。
“いわゆる”子育て・教育法のホンネ

確かに、子育ての悩みは尽きないため、これまで多くの教育評論家やベテラン保育士などが子育ての解決策を発信してきました。
You TubeなどSNSのおかげで悩みが解決したということもあるかと思います。
しかし…
その時はうまくいっても、変化がないと飽きてくる。
他の子はうまくいったかもしれないけど、うちはイマイチだった‥。
なんてことはありませんか?
全てうまくいくのであれば、問題ありません。
しかし、子ども一人ひとりに特性があるため、“いい”といわれる教育が、必ずしもその子にとっていい教育かはわかりません。
傾向や確率はあっても、一人ひとりが違うため全てこのようにすればうまくいく、と断言できないのです。
【失敗談】“いい”教育を受けてきた長男
あるご家族の話をさせてください。
※実話ですが、JUMP&LEAPご利用者様及び、SENDAIXTRAIN関係者とは一切関係ありません。
①親が決めた長男の習いごと
3人兄弟を育てるご家庭。
経済的に豊かだったこともあり、子どもたちの教育に力をいれていました。
才能ある子供に育ってほしいという親の想いが強かったそうです。
特に長男には
赤ちゃんのときからモーツァルトの曲を聞かせ、英語、水泳、バスケ、体操教室、習字教室、某有名学習塾など多くの習い事に通わせました。
そこに長男の意志はありません。
ただ、頑張ったご褒美に、ゲームや漫画など買ってもえるため、本人は親に言われるがままつづけていました。
②無傷な環境を親が前もって用意
長男が小学校高学年になった頃のこと。
素行不良なグループと、一緒に行動するようになったそうです。
それを知った親は、心配し地元中学ではなく、ある程度の所得がある中高一貫校に入学させました。
そうして、親にすすめられるまま大学進学、また専門学校にも通い資格を取得します。
就職先も親が紹介した先で働くように‥。
③親亡きあとの長男の末路
社会人として、働くようになってすぐのことです。
親が病を患い、闘病の末に亡くなってしまいました。
長男が家業を継ぐこととなりましたが、今まで言われるがままにやってきたため、何をどうすればいいか、どうしたいのかわかりません。
失敗したときは、責任を逃れるため嘘ばかりつくようになり、信頼できる兄弟や友人、知人が離れていくように…。
結局、独りになってしまい、その寂しさから親から相続した遺産もほとんど使い果たしてしまったそうです。
言われるがまま、詐欺師にも友人にも騙されました。
しかし、自身のその行いですら、
長男は「親が自分をこんな風に育てたせいだ」と言って、他責でばかりいることは変わりませんでした。
長男が人への思いやりや、誠実さが欠落してしまった原因は親に問題があったのでしょうか?
[どうすれば?]パルクールで考えてみる
問題点
今回は極端な事例だったかもしれませんが、“よい”教育・子育てが増えるほど陥りやすい罠でもあります。
「モンテッソーリ教育がいいらしい」 「将来性のある子に育ってほしいから」
「英語だけじゃない第三言語も学ばせるべき」
もちろん、親の子を想う気持ちから、いろんな経験をさせるということは素晴らしいことだと思います。
しかし、既述した長男の話のように、
(①の時) 子どもの「好き!」「やりたい!」という思考がない。
(②の時) 悩みや不安について一緒に考えるより前に、親が思う“よい”選択をさせる。
これでは、自分で考える力が身につかず、失敗を恐れ挑戦もすることがなくなります。結果的に無責任な人間になる可能性があります。
パルクールで考える⇒①の場合
「ブランコとか滑り台したら?」 「ほら、そこパルクールできそうだよ」
長男の話①のように、親が先導してしまっていませんか?
パルクールは、教科書通りに教えることはありません。
上まで移動したい欲求や技をやってみたい挑戦を、子どもたち自らもった段階で、コーチがサポートします。
子どもの好きや強みを信じて、求められたらサポートに徹するだけ。
タレント・イラストレーター、そして東京海洋大学の教授としても活躍するさかなクンのお母さんの素敵な話があります。
さかなクンが 「ゴミ収集車が好き」→一緒にゴミ収集車のあとをどこまでもついていく。
「タコが好き」→いろんな味付けのタコ料理を作ってみる、水族館に閉館時間までずっと付き合う お母さんも、さかなクンの興味に共感しました。

魚のことばかり考える、さかなクンに対して 学校の先生は「他のことにも興味を‥」と指摘しました。 しかし、お母さんは「それでいい」とおっしゃったそうです。
皆さんもこうなりましょう、というのではなく 子どもの可能性を信じる姿勢は、親が一番してあげられることではないか、と考えます。
長男の場合も、 本当は車の部品や機械の解体が好きだったので、車の博物館や車の整備工場に連れていくだけで十分だったのかもしれません。
パルクールで考える⇒②の場合
パルクールでは・・・
・環境はある程度あるが、何をするかは子どもに任せる。 ・「こわい」けれども試行錯誤、挑戦から逃げずに立ち向かう。
・大人は子どものできるを信じる。
これらを大切にしています。 どんなに石橋を叩いていても全てうまくいく人生はありません。 困難にぶつかってら「さて、どうする?」が重要で、成長のチャンスなんですね。
長男の話②の場合
・そのグループに魅かれる部分はあるのか?
・そのままでいいか、もしくは違う場所にいきたいのか考える。
・どの選択も、まず信じる(妥協点を探す)。
難しいですが、「どこを目指すのか」、「特にないのか」を知ることだけでも大事かと思います。
まずは否定せず信じる親の姿勢が、解決のきっかけになるのです。

まとめ
今回は一般の子育て・教育とパルクール目線で考える子育て・教育の違いを伝えるため、事例をだしながら子に対して親ができることを解説してきました。
「いい教育法」が我が子には例外である可能性があること
問題に気づくことから始めること
その子の何が強みかを知ること
ご紹介させていただいた三兄弟の長男には信じられる家族も友達もいなくなりました。
周囲の人はみな口をそろえて「親が悪かった」といいます。
人生には、お金や学歴・資格が必要かもしれません。 しかし、信用がなくなってしまえば、人は離れていきます。
人は独りでは生きていけません。
自分で考える必要がないほど親から与えられすぎた結果、長男の心は成長せず、無責任で不誠実なまま信頼を失うことになりました。
愛しさゆえ、期待するからこそ、 頑張る方向がズレてしまわないよう、是非一度ふりかえってみることをオススメします。
それでは、また♪